彫刻機

彫刻について

印刷ではありません。

彫刻について

配電盤

  

 "彫刻”と聞くと、鮭を咥えた熊やトーテムポール、魚の形を木から掘出したものや大理石でできたミロのビーナスなどを想像されるかもしれません。

 

 私どもの行っている彫刻とは、木材や金属/アクリルの板などに文字やマークを彫り込む作業のことを指していて、多くの方は普段の生活で目にしていても『これは彫刻だな?』と、意識されることは少ないと思います。

 

 普段の生活の中で彫刻を施してある表記物は、施設の配電盤や加工機械の操作盤、表札や電柱に取り付けてある表記物が主だったものでしょうか。

 

 彫刻は塗料で印刷したりレーザー彫刻で浅く彫刻した物とは異なり、しっかりと素材に彫り込んだ後に色を入れていますので、長期間野外に用いたり、すれたりする環境でも長きにわたって表示内容が消えることなく用いる事が出来ます。

 

線文字とアウトライン形式文字の彫刻について

手動彫刻機の切削写真 さらい文字

  

 鉛筆やペンで文字を書くように、中心線だけで作られている文字を線文字とかストロークフォントと称します。この中心線を、文字の大きさに似合った直径の刃物でなぞっていくと、写真上(裏彫り反転した゛管”の字)のような彫刻が出来上がります。

 

 刃の直径が細ければ細い線で書いた文字のようになり、太い刃物を用いれば、マジックペンなどで書いたように太い線の文字になります。また、線の末端は必ず半円が残るのが特徴です。

  

反対に、文字や図柄の外線を予め指定して置いて、線で囲まれた内部を塗りつぶした文字をアウトライン形式文字と呼び、縦横の線の太さが異なる文字(マジックペンで書いた文字)やマーク(ロゴ)、明朝風-ゴッシック調の文字などの場合、文字やロゴの外枠を先に細い刃物で彫刻をおこなった後、彫り残した部分を削り取っていきます。

  

イメージ的には、ぬり絵とよく似ていて、図柄枠を先に描き(彫刻し)、あとは中を塗りつぶして(削り取って)ゆく工程となります。

  


機械彫刻用標準書体 機械彫刻用標準書体 字母

  

 私どもが行っている工業用銘板への彫刻に用いている書体は、通称『機械彫刻用標準書体』となります。彫刻機で用いる刃物は、回転する刃物ですから、どんなに細い刃物を用いても文字の突端に当たる部分には、刃物の半径に相当する円弧が出来てしまいます。

  

 効率よく彫刻を行うことと視認性を考えて、ハネや筆押さえなどを省略しているのが特徴です。また、各工場が機械彫刻用標準書体のルールに則った原盤を作成しているので、各工場ごとに少しずつ印象が異なるのも特徴です。

 

 さて、明朝/ゴシック系の書体も細い刃物で浚い彫りを行う事で、似た雰囲気の文字を制作する事が出来ますが、シャープな突端をご希望される場合はお断りさせていただき事もありますので、予めご理解頂きますようお願い申し上げます。 

  

  

>> 工業用銘板の詳細

       

用いる刃物について

エンドミル Vカッター ダイヤモンドホイールで研磨している写真

  

 樹脂や木材、金属などに彫刻を行うには、回転する刃物を用います。また、同じ大きさの文字を細い線(刃物)と太い線(刃物)で彫刻した場合、太い線(刃物)で彫刻すると隣り合う線同士が繋がってしまい『文字が潰れてしまう』状態になります。

  

 そこで、私どもでは目安として『線の太さは、文字の高さの8%-10%程度』としています。また、彫刻に用いる刃物は少し変わった形をしていて、槍のような形をしています。先端が細く根元に近いほど太くなる刃物ですから、彫刻する深さが浅ければ細くなり深く掘れば太い線になります。

  

 厚みが均一な物なら比較的線の太さが揃うのですが、アクリル樹脂への表彫りや木材などでは、刃物を平行に移動させても厚みの上下により線の幅が若干広狭する事もあります。

 

 また、厚みの増減を気にしなくてよいように、フライスに用いるエンドミルを取り付ける事もあるのですが、細かく細い文字を彫るには適していませんので、彫刻の多くはご依頼の文字に応じてその都度研いだ刃物を使用しています。

 

裏彫りと表彫りについて

彫刻 さらい文字

   

 彫刻には、墓石や表札などの表側から文字を彫るのと、透明なアクリル板などの裏面に塗装を行ったものに、左右反転させた文字などを裏側から彫刻する物があります。多くの場合、透明な材料では裏から文字を彫刻する事が多く、不透明な素材には表面からの彫刻が多い傾向です。

  

 具体的な裏彫りには、工業用タイトル銘板、エプロン(ダルマ)銘板や一部の自治会札、クリスタルな印象を強調したわんちゃんの迷子などに用いるられています。

  

 表彫りは、ゴルフ用ネームプレート・粘土ヘラ・ジッポー・アルミ・ステンレス製の銘板類、成型品への彫刻や木材・MDF等の表札類や埋設杭/ヤード杭などです。

 

 裏彫りで作成した銘版は、透明なアクリル層が大気側にあるため塗装が守られて、長い期間彫刻内容が消滅しないというメリットがありますが、印刷やカッティングシールなどの技術が進んだ今日では、表彫り/裏彫りのメリット・デメリットよりも彫刻という手法を選択しない事も増えてきています。

  

手動彫刻機では原版が必要です。

彫刻機 長孔用原盤

  

 ご依頼された彫刻内容によっては、手動彫刻機なら切削するための原版の作成が必要になります。

  

 コンピューター彫刻機であれば、線文字以外の彫刻において切削データーを作成しなければならない事がありますが、線文字のみの彫刻の場合、手持ちの刃物や切削する深さの調整で対応することが可能です。

 

 ロゴやゴシック風、筆字風などの彫刻では、頂いた図面や写真などから切削データーを起こしたり必要になります。この場合、出来上がった原版やデーターから彫刻を行った物を校正して頂きます。

 

 また、手動彫刻機では、1文字の彫刻やマークであっても原板の作成が必要になることがあります。手動機で行う場合は、効率を考慮して彫刻可能な文字列として作成します。しかし、マークやロゴなどにおいて細部表現が必要な場合、彫刻するマークに対して2倍~10倍の大きさで原板作成が必要になることもありますので、お気軽にご相談ください。

 

 手動彫刻機は、非常に精度よく加工が行えるように作られています。今、仮に1cmのリング状の溝を彫る場合、10倍の大きさである10cmの原版を用いる場合と20倍(20cm)の原版を用いる場合では、仕上がり制度も異なってきます。仮に原版を制作するとき、直径が+0.1mmm大きく作ってしまったなら10倍の原版なら10.001mm 20倍の原版なら10.0005の狂いとなって反映されます。正しい寸法も誤差も縮小される機械なのです。

 

 私どもでは今現在、このような精度を要する加工は承っていませんが、手動彫刻機を用いる場合は原版を制作しなければ加工で出来ませんので、彫刻内容の2倍~10倍程度の大きさで原版作製が必要になる事を予めご理解頂きますようお願いいたします。

  

>> 彫刻用原版の詳細