赤城大沼

わかさぎ雑学 富栄養湖の湖水循環

湖にすむ生き物の環境について

十和田湖

 このページでは赤城大沼や榛名湖(2循環湖)の湖水循環について説明します。湖水の循環には水深や標高、風の強さや時間などが大きく作用していますが、ここでは水温のみを扱いますので、もっと詳しくお知りになりたい方は湖沼学などの専門書を御読みくださいね。

  

>> 補足記事 循環湖について

  

 群馬県には天然湖沼のほか、やめ池や大規模なダム湖も存在していますが、水の出入りが多いダム湖は天候や水の利用状態などが強く反映されますので、釣果や安全のために水位や水温など事前の情報収集が重要です。

水深と水温の関係について

水温と水深の関係

 太陽からのエネルギーに頼って地球上の生物は日々暮らしています。私達も生態系の中に組み込まれていて食物連鎖の底辺を担っている植物の光合成から生み出される有機物に頼っていますね。

 

 湖の中も植物性プランクトンが食物連鎖の底辺を担っていますが、地上とは違って比較的閉鎖された環境の為か光の強さや水温・季節や湖の種類によって植物性プランクトンの種類や生息場所などが変化してそれを捕食する生き物の生息環境も変化するのです。

 

 湖の中は季節や風向きによって水温が変化します。夏に良く見られる水温状態は図のようになっていることが多くみられ(夏期停滞期)、これは水の比重が水温4℃の時が一番密度が高い(同じ体積なら重い)ためにおこり、湖の水温分布はプランクトンの発生や分布・それを捕食する魚の分布にも深くかかわっています。 

 

 

● 表層水とは、太陽光を受けて暖められ風によって良く混ぜられている水の層です。

● 水温躍層とは急に水温が低下する層のことです。夏から初秋はこの付近を回遊します。

● 深水層とは、太陽熱の影響をあまり受けない下層の水の比重が大きい水の層です。

春の循環期について

湖の春の循環期

 地球上の多くの生き物や、水中にすむ魚・プランクトンにとっても酸素の量は変重要です。私達が釣りの対象としているワカサギは、水中の酸素濃度が水1リットル中に約3ミリグラムを下回ると生きていけません。しかし、ミジンコなどの仲間にはこの低酸素領域に昼間は逃げ隠れたり、低酸素状態の湖底でもアカ虫や糸ミミズなどは生息しています。

 

 春、厳しい冬のあいだ凍っていた湖の氷は、春の訪れと共に解けていきます。この頃の表層~中層の付近の水は、冬の間に良く冷やされていて氷の温度に近いのですが、太陽に温められて表層の水温が約4℃になると、4℃より低い水温との間で対流が起こります。(水は約4℃が1番重いから)この現象が続くと図のような状態になり、水温は湖の表面から湖底までほぼ同じ温度になります。表層の酸素も一様に広がっていき 湖底の栄養分を含んだ水中で植物性プランクトンをはじめ多くの微生物が増え始める準備ができあがります。(注意:水の最大比重は約4℃ですので、水温が1℃でも2℃でも対流が起こります。)

       

夏の停滞期について

湖の夏の停滞期

 太陽の光を受け表面の水温が上昇し始めると、水温の高い表層水と水温の低い深水層、そして水温躍層が形成されていきます。この時期の水温躍層が形成された湖の中では、寿命を迎えた微生物の亡骸や微生物を食べたミジンコ達の脱皮した抜殻などが湖底へと沈んでゆき、腐敗して、春の循環期に供給された酸素を消費してしまいます。こうして湖底付近に魚の住めない無酸素領域が出来てしまうのです。

  

 反面、プランクトンの栄養となる有機物が少ない湖では、夏になっても酸素の消費が強く起らず湖底近くでも十分な酸素が維持されます。このような有機物などの栄養素の少ない湖沼を貧栄養湖と言って、群馬県では菅沼などが該当します。

  

 昭和初期、群馬県のとある地方で灌漑用のため池を作りました。このため池では昭和30年ごろから鯉の養殖も行われたのですが、近郊の小河川からの取水量が乏しいために、完全な水不足の解消には至らない状況が続いていたのです。昭和44年ごろ沼田市岩本町の利根川で取水した水をため池に貯留する水路が完成し、今までの10倍もの水を確保できました。 しかし、この湖沼では5・6月頃は下層の酸素が消費され湖の中心部では無酸素領域ができてしまい、7~9月には表層へ向かって拡大して水深6mより深い場所では、魚の住めない環境が存在していたのです。

秋の循環期について

湖の秋の循環期

 スーパーの店頭にマツタケやリンゴが並び始めるころになると、気温が水温より低い日々が続くようになり、湖は冷やされいきます。この頃の湖の水は、空気に接している表面が最も冷やされ、影響を受けにくい水中はまだ暖かい状態です。水は温度が下がると比重が高くなるので、下層の温かい水の比重より重くなると下層の水と入れ替わるように湖の中へおちはじめます。

  

 冷えた水は、表層と中層間で対流を起こし、続いて中層と下層での対流を起こしながら、徐々に湖水の温度は水の最大比重である約4℃になるまで続きます。この循環は、湖底では酸素の多い水の沈降によって酸欠から解消され、反対に表・中層では湖底に溜まっていた有機物やミネラルが巻き上げられて、湖全体に栄養が供給されるのです。(注意:水温4℃にならないと対流が起きない訳ではありません。下層の水温より冷えれば対流が始まります。)

  

 

>> 補足記事 群馬衛生環境研究所の平成12年度湖沼水質調査から榛名湖のデーターを見られます。

冬の停滞期について

湖の冬の停滞期

 秋の停滞期を過ぎると、湖は冬の停滞期へと移ってゆきます。北日本の湖や標高の高い湖沼では、厳冬期に結氷する事は一般的ですね。湖に氷が貼ると、氷下では良く冷えた氷に接しているので水温は約0℃です。しかし、水深のある場所では比較的4℃に近い水温の水で満たされています。また、秋の停滞期で湖全体にいきわたった酸素は、微生物による有機物の分解や魚の活動などで緩やかに消費されて、解氷後の春の循環期まで続きます。

   

 群馬県には結氷する湖沼(赤城大沼・尾瀬沼など)と凍らない湖沼(三名湖など)があります。標高の低い結氷しない湖沼では、湖水が概ね4℃になったあとも、表層水は良く冷やされた水が表面を被っている状況となります。この時の湖底の水温は約4℃位ですから底の方が温かいのです。

  

温暖化の影響からか、最近の榛名湖は氷上ワカサギ釣りが出来きない年が多くなってきました。1980年頃は1月には全面結氷し多くのワカサギ釣りで氷上は大変な賑わいでした。赤城大沼も12月下旬に結氷したのですが、年々遅れているような感じですね。

       

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